fileNo.69
ビッグ・リボウスキ
1999/01/18
監督,脚本:ジュエル・コーエン
製作,脚本:イーサン・コーエン
音楽:カーター・バーウェル
出演:ジェフ・ブリッジス,ジョン・グッドマン,ジュリアン・ムーア,スティーブン・ブシェーミ


コーエン兄弟です。前作の「ファーゴ」は大傑作だったんですが,今回はどうでしょうか。あまり,ハズレがない作品を連打している作家なんで当然のごとく期待してしまいます。

”ボーリング”このいい加減な設定が実に良い。タイトルバックがまた良い。今まで見た映画の中でも,10本の指に入るのではないか。登場人物も素晴らしい。コーエン兄弟御用達の面々が嬉々として演じている。ジョン・グットマン演じる”ベトナム症候群の男”やジョン・タートゥーロ演じる”紫のジーザス”なんてのは傑作だね。

性懲りもなく,スタイリッシュな映像を散りばめながら,物語は展開して行くが,あまり嫌みになっていないのは流石である。そして,フクミ笑いを含め,爆笑する場面も多数あり2時間弱の間,どっぷりコーエンワールドに浸れる。

結果として彼らの作品群の中でも傑作の部類に入るのだと思う。が,しかし何かひっかかる感触があるのはなぜか。ある意味「ファーゴ」の時に感じた同じ感覚であるが,今回はもう一つ次元の違うような気もする。

「ファーゴ」,「バートン・フィンク」には,登場人物を貶めて右往左往する様子をキワドイ感覚で描き,人間の業みたいなものを浮き彫りにしてはいるが,その目はどこか覚めていて感情(愛情)が欠落しているように感じられた部分があった。
反対に「赤ちゃん泥棒」「未来は今」なんかで感じられた,そのどうしようもない状況にいる人間に寄り添うような雰囲気。

この二つの感覚がこの「ビッグ・リボウスキ」にはあると思う。言わば集大成。確かに,主人公を取り巻く状況はお決まりのように悪化の一途をたどり,突き放した見下ろすような冷ややかさは依然として感じられるものの,そこには暖かみがあり閉塞感はない。

その理由は,今までの作品には無い主人公の人物設定があげられる。彼は周りの状況に戸惑いながらも,苦悩することは無い。「身から出た錆」くらいにしか思っておらず,あえて足掻きもしない。複雑になった問題も半ば自然に解消されて行き,彼の成し遂げたものは何一つ無い。そのいい加減さが全てなのだ。実に愛すべき人物として描かれている。

その感覚が,物語を創作した作家の悪趣味(語弊があるが)な貶めをも,すり抜けるという不思議な現象を起こしている。ジェフ・ブリッジスの渾身(?)の演技が見事である。

だた一つだけ余分な事は,その全ての情景を眺めて,語りべとなっているサム・エリオット演じる”ストレンジャー”が,最後に吐くセリフはイタダケナイ。そんなことは言わなくても大丈夫。見てる方もバカじゃないんだから。

shima-s@fka.att.ne.jp

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送