fileNo.77
スネーク・アイズ
1999.2.27
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ブライアン・デ・パルマ,デビッド・コープ
出演:ニコラス・ケイジ,ゲイリー・シニーズ,カーラ・グジーノ

ブライアン・デ・パルマです。最近は「ミッション・インポッシブル」とか超メジャー大作を撮ってまして,”エンターテイメントが撮れる監督”として評価を受けています。確かに「アンタッチャブル」は申し分ないエンターテーメント映画で,デパルマらしさもあって私も好きなんですが,「ミション・・」はイタダケませんでした。

「最近のパルマは変わった」なんてお嘆きの貴兄,私も同感です。妙に一般受けしちゃって。やはり,パルマの真骨頂は「ファントム・オブ・パラダイス」や「殺しのドレス」などでお馴染みのオタクっぽい映像づくり。ストーリーとはあんまり関係ない「おれのセンス最高だろ」ってな具合の”カメラワーク”や凝りまくった編集こそパルマであり,その物語と映像感覚とのアンバランス(良くいえば奇妙なバランス)さが最高なのである。

そんな作品群中でも,物語と映像とが見事にシンクロしたのは,最高傑作「ミッドナイトクロス」でしょう。今回の「スネーク・アイズ」は,その「ミッドナイトクロス」を彷彿とさせる映画です。「ミッドナイトクロス」では”音”と”連続写真”を繋ぎ合わせて事件を”再現(再生)”しましたが,今回は複数台の監視カメラを”再生”して事件を再現しています。しかし,物語はそっちのけなんです。結論から言うと「ミッド・・」の完成度には及んでません。

お話は,1万4千人の観客を集めた巨大スタジアムで,ボクシングの試合中に国防長官が暗殺される。試合を観戦しに来ていた地元の汚職刑事が現場の指揮をとり,スタジアムと隣接するカジノを閉鎖する。ハリケーンの到来の中,暗殺事件の真相に迫っていく。そして,そこには意外な事実が・・なんて具合なんですが,まず映像ありきで物語はその次になってます。(この方が,いつものパルマらしいが・・・)

オープニングの”映画史上初の13分間ノーカット撮影”が話題になってます。確かに大したテクニックです。ニコラス・ケイジ扮する汚職刑事のキャラクターと,この物語に絡む主要人物の描写を,この13分の長まわしの間で描き切ってます。しかし,疲れます。映像を追うのに神経を集中させるだけでも大変なのに,13分間のほとんどにおいて”セリフ”があります。

パロマ君はすでに得意になってます。付き合ってあげましょう。で,その長まわしの直後,国防長官が暗殺されます。そこに絡んでくる”ブロンドの白人女性”は実は変装していた,なんてヒッチコック調のお遊びありの,スタジアムに設置されいた複数のカメラの映像を再生して八百長試合を見破ったり,得意のエレベーター内でのサスペンスやホテル中での覗き趣向の俯瞰撮影,鏡を利用したカメラ・アイでの主観撮影,エンディングロールでの8分間長まわし,そのあとの謎解きなどなど,パルマファンには堪らない映像の数々。

「カメラは演技するな」と言った黒沢監督が見たら何と言うでしょうか。でも,パルマ君はヒッチコックだけでなく,その黒沢も好きなんでしょう,物語の構成が「羅生門」みたいなんです。

せっかく,登場人物の証言による事件の”再現”と監視カメラでの”再現”といった双璧のアイデアがありながら,今一歩生かしきれていないパルマ君でありました。

shima-s@fka.att.ne.jp


 






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送