file No.38
熱帯魚
1998.2.28
監督、脚本:陳玉勲 
出演:林嘉宏,席敬倫,林正盛      

今回は台湾映画です。もーびっくりだね。実に軽妙なんだな。陳玉勲って監督ただ者ではありません。 いろいろな意味で感動してしまった。 

高校受験を控えた中学生が誘拐事件に巻き込まれてしまう話なんですが、暗いお話では決してありません。 

受験戦争は台湾にもあるらしい。ここに描かれている台湾の状況が本当(多少の誇張はあるにしても)なのであれば、今の日本と同じじゃないか。そうだろうな。日本を手本として進んできた国だから、体制も似ている。なんだか、この設定のまま日本でも作れそうな気さえします。 

「夢を持つことの大切さ」なんてことがテーマだったりしますが、そんなことよりも気楽に楽しめるコメディ感覚にあふれています。会話劇の要素と大胆な省略によってスピーディーに物語が展開する脚本は見事です。 中学生を取り巻く誘拐犯一家の人物描写(特にばあちゃんは最高)は秀逸で、どこか下町風の親しみと懐かしさを感じさせます。 

この作品を見ていて北野武監督作品を思い出しました。もちろん暴力シーンなんて皆無なのですが、「3ー4×10月」で展開された浮遊感、「あの夏いちばん静かな海」での少年2人の掛け合い、「ソナチネ」における海辺での相撲などを連想させるのです。 

そこには、北野武監督が理想とする映画のあり方に共通する感覚が感じとれます(決め付けすぎなのかもしれない)。もしかしたら、北野監督がコメディを作ると(実際「みんなやってるか」を作っているが、残念なことにまだ見ていない)こんな感じになるのでは、なんて思ったりします。 

 まっ、そんなことはともかく、今日のような狂躁の世の中にあって(日本も台湾も)現実から離て浦島太郎みたいに「竜宮城」でのんびりと生活できたらな、と思っているあなたに最適の映画です。なにか、久しぶりに大笑いして心地よい余韻に浸れる作品でした。 

 ただ、「竜宮城」から戻ったら現実が待っていますけどね。 
 

shima-s@fka.att.ne.jp
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送