file No.39 
イル・ポスティーノ
1998.3.7
監督:マイケル・ラドフォード
出演:マッシモ・トロイージ,フィリップ・ノワレ      

いやーいい映画でした。号泣なんかじゃなくてじわっと涙が滲む、そんな作品です。なんたって、ロケーションが抜群。南イタリアの風景がひたすら奇麗です。日本人がここで詩を書いてたりするとちょっとクサイんですが、そこはイタリア人。いいんです、これが。 

お話と云えば、風景が奇麗以外なにも無いような貧しい村に、チリの世界的詩人「パブロ ネルーダ」が 祖国を追われてやってくることで始まります。漁師になりたくないと思っていた青年がそのことを知り、サインを貰いたいがために彼の専属の郵便配達人(イル・ホスティーノ)になります。「詩人のように女性にもてたい」なんてことも一つにありました。やがて、詩人と郵便配達人のこころの交流がはじまっていきます。 

ポストマンと詩人が次第にこころを通わせあって行く、その過程の描写がすばらしい。やさしさが溢れています。まるで、出来の良くない息子を見る父親のようです。詩作中の詩人を気遣って、玄関にじっと佇む配達人マルコ。それに気づいて、やさしく向かい入れる詩人パブロ。なんともいいじゃないですか。そして、二人で海の見える海岸道を自転車でこいでいく。交わす言葉は多くありませんが、じんと来ます。 

ここに登場する村の人々の描写もステキです。マルコの親父、ネルーダの妻、神父、レストランの女将、ベアトリーチェ、悪徳(?)政治家など。生き生きと描写されいて、それぞれに好感がもてます。 

あと一人、忘れてはならないのが郵便局長。実にいい。マルコのわがままをゆるし、最後の方では録音機を持ち出しマルコと二人で「島の美しいもの」を録音して廻る。ここの描写はこの作品のテーマである「詩」そのまま。透明感のある描写にやはり、じんと来るのです。 

ただ、ちょっと思うには。パブロが云うように「詩」は「詩は理屈ではない、こころで感じるままなんだ」なんでしょうが、その「詩」をテーマにしたこの作品は映画。映画と云えば脚本。脚本と詩とはかなり違った要素がある。脚本は理屈(計算)なんだよな。こんなテーマはむづかしいだろうな。そんな意味からも、一人よがり的になりがちなのを見事にまとめてあります。 
マルコを演じる主演のマッシモ・トロイージは、クランクアップの12時間後に息をひきとったとのこと。冥福をお祈り致します。 
 

shima-s@fka.att.ne.jp
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