file No51
ラブ・レター」
1998.5.14 (試写会)
監督:森崎   東
脚本:中島   丈博
原作:浅田  次郎
出演:中井  貴一,山本  太郎,耿  忠,根津  陣八,賠償美津子,大地  康雄

久々の試写会。何年ぶりだろうか。券を貰って行く気なったのだが,当日になって「一人で行くのもな・・」と思って人を誘ってみた。案の定断られた。そりゃそうだろうね,こんな映画いくら只でも野郎二人で行くようなもんじゃない。ゴモットモ。と言うわけで行ってきました。一人で。

結果,そんな奴は私ひとり。あとは,みんな女性同士かカップル。予想どおり。突然の会場変更にも,300ほどの席は満席。どういう訳だかオバチャン連中が大挙しておしよせていて,なんと一番前の席に陣取っている。しかも弁当を食っている。どこかで携帯が鳴る。私の前の席のネーチャン二人は自分の前の男性の風貌を笑っている。笑っているネーチャンの一人を見ると何を血迷ったのか,眉を書きすぎて”こめかみ”を通り過ぎて髪の生え際まで到達している。笑えた義理か。

会場と云えば劇場ではなっかたので,椅子が硬い。勾配もとっていない。そんな悪条件の中,試写を見た。

原作は直木賞作家・浅田次郎。短編集「鉄道員」の一遍らしい。らしい,と云うくらいだから当然読んでいない。試写が始まる前に映画宣伝用のチラシを読んだが,面白そうだ。面白そうだが,展開が手に取るように分かったしまった。あとは,構成と人物描写が問題だ。

結果は「ダメ」である。十分に泣けるが「ダメ」である。どうしたものか。

多国籍化しつつある新宿あたりの雰囲気は出ているように思うが(思うだけで実際は知らない),如何せん,人物描写が「ダメ」である。描写と云うより設定がマズイ。

とても,偽装結婚(しかも,1回しか会っていない)した出稼ぎ中国人女性の死を嘆き悲しみ,世の中の不合理に怒りを爆発させるような男に見えない。中井貴一は正直者に見えすぎていけない。どこか生真面目な人物で人が良すぎる感じが隠せない。そんなんじゃ「吾郎の中に失われていた何かが,突然涙となって溢れだしていた・・・(チラシ引用)」と言ってもリアリティーがない。もっと寡黙で擦れてなきゃダメである。

それに,あまりにも中井演じるヤクザくずれと中国人女性との接点が少なすぎるため,ヤクザの真っ当な人間へと改心させるだけの力点が弱すぎる。少なくとも例えば,偽装結婚後の別れのシーンをもっと印象的なものにするとか,入国審査時のエピソードの中の一連のくだりで女性が言ったことがヤクザの理想とする家庭像だったとか,ヤクザの心に引っ掛からないといけない。

彼は同情して泣いているのか?違うはずである。その違いがこれでは全く分からない。ましてや,女性の名前を絶叫するシーンなんてのは愚の骨頂である。今のいままで偽装結婚の相手の事なんて脳裏の片隅にも無かった奴が,どうして泣けるのか。悪態をついて力説しても何の説得力もない。  

それぞれの生き方に違いがある二人に,その中で何か本質的な部分で繋がりを感じさせなければ,この映画は成り立たないのである。

もし,手紙が彼女の死の前に彼の手元に届いたとしても,彼はどうしたのか。なにも,できないはずである。こんな陳腐な映画では人を癒せやしない。
 

shima-s@fka.att.ne.jp
 
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