file No83アイズ・ワイド・シャット
1999.8.1
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック/フレデリック・ラファエル
出演:トム・クルーズ,ニコール・キッドマン,シドニー・ポラック,トッド・フィールド

キューブリックです。「フルメタルジャケット」から12年が経過しています。そしてこの作品が遺作となってしまいました。この監督の作品では「時計仕掛けのオレンジ」が気に入っていますが,どれを取っても傑作・怪作ぞろいです。

このところ,長期間のブランクを経て作品を作った監督達の作品をみましたが,テレンス・マリックにしろ,ジョージ・ルーカスにしろ,寄る年波と現場から離れていたブランクを感じずにはいれてない作品を撮ってしまってます。やはり天才と言われる人々も完全じゃないってことですかね。

キューブリックはどうでしょう。結果から言うと,やはり残念ながらこの巨匠をもってしても例外ではなさそうです。

先ずお話の展開が遅すぎてついていけない。もどかしいのだ。こちらの問題でもあるが集中することが苦痛に感じられる。確かに衝撃的なシーンは多い。例えばオープニング。いきなりのキッドマンのヌード。これがまたキレイなのだ。次はトイレで用をたしたキッドマン。はたまた,パーティー会場(トイレの中だろう)でのヤクでラリッたオネーチャンの全裸シーン。
これらはこちらが予想もしない展開で,なお且つ予想もしない登場の仕方をする。これがリアルで衝撃的なのだ。流石である。

でも,しかしである。こちらのキューブリックに対する先入観というか期待感は尽く裏切られることになる。セックスと言う題材を扱いながら,いかにも落ち着き過ぎている。過激でもなく,それほど官能的でもないのだ。確かにファックシーンは出てくる。でも,その描き方が古いというか観念的で衝撃の度合いはかなり弱い。

スピルバーグは「キューブリックは常に新しい」といっているが,この作品を見る限りそれは当てはまらない。トム・クルーズに抱かせる「幻想」「妄想」の描き方が平凡すぎる。秘密のイベント会場の古めかしさ。行われる儀式も陳腐でなにも感じられない。「妄想」と「現実」と「夢」この境界がなくなり,縦横無尽にトリップする感覚を期待していたのに,全くの肩透かしだ。

また,一番イタダケナイのはシドニー・ポラック演じるダーディーな実力者が,ペラペラしゃべって真相を明かしてしまうことだ。感づいていたとはいえ,トム・クルーズがあれだけ苦悩する理由を見出せない。そこが描かれていない。多分,それが妻に対するものであったり,自分に対するものであるに違いないのに,それに関するより具体的な描写が決定的に不足していると思う。

だから,トム・クルーズの行動がイチイチ幼稚でマヌケに見えるのだ。これじゃ,そこいらの飢えたオヤジさん達となんらかわりない。

まっ,見所としては,序盤のパーティーでのおじさまとキッドマンのダンスシーン。これはかなり艶っぽい。オトナの世界だ。それと,死んだ患者の娘がトムを誘惑(告白)するシーン。これはマリー・リチャードソンの圧倒的な演技力で,観る者に恐怖感さえ感じさせます。

この作品を30年前に映画化していたら,もっと刺激的で今でも新しいときっと言われる作品になっていたんじゃないだろうか。
 
 

shima-s@fka.att.ne.jp
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