file No.01
ファーゴ
1997.9.15
監督、脚本:ジョエル・コーエン  
製作、脚本:イーサン・コーエン
出演:フランシス・マクドーマンド,スティーブン・ブシェミ,ウイリアム・H・メイシー
ピーター・ストーメア

不思議な映画である。非常に重い題材なのに明るい。劇中6人が殺される(1人は挽肉になる)にも関わらず、非常に軽い。偽装誘拐がちょっとした弾みで凶悪事件に発展していく実話をもとに製作されているのだが、ありがちな深刻さがあまりない。     

脚本の巧みさがあるのは言うまでもないのだが、主演のフランシス・マクドーマンドの名演によるところが大きい。彼女の役どころは警察官でしかも署長しかも妊婦である。軽妙なセリフまわし、コミカル(妊婦独特の)な動作、実にチャーミングである。実に幸せそうである。    
また、スティーブン・ブシェミ、ウイリアム・H・メイシーもストーリーに不似合いなくらいコミカルである。それに対峙した存在がピーター・ストーメアである。しかし、この男でさえも暫くは無口で、口を開けば「パンケーキを食いたい」などと言う程度。危険な気配はするものの大したインパクトは与えない。      

誘拐犯の一人が「いい人そうな警官」をいきなり射殺するあたりから、ストーリーと登場人物像とが奇妙にバランスしてそれぞれが破綻しそうな限界のあたりで話しは展開していく。      
深刻すぎず、軽すぎないのにどこか重厚な感触があるのはなぜか。     

映画的要素の「対比」があるからであろう。その「対比」が適当な「落差」をもっているからだ。「女警官の旺盛な食欲」と「犯人達の異常な性欲」、「ハンバーガー」と「人肉ミンチ」、「妊婦」と「殺人」,「ストーリー」と「登場人物」そして事件の舞台となったファーゴの雪景色(白と黒のコントラスト)。

奇しくも劇中で、誘拐される婦人が息子に言うセリフに「その落差が恐いのよ」とあるが、まさにこの映画そのものである。      

実話に忠実に作られているせいか、曖昧な場面があるようにも思えるのだが脚本のバランス感覚の一部と見るのが妥当であろう。      

しかし、登場人物の誰一人として、観る側の感情移入を拒み続けている。そんな気がしてならない。不思議な映画である。        
        

shima-s@fka.att.ne.jp
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