file No.02
恋する惑星  
1997.9.21
原題:重慶森林      
監督、脚本:王家衛(ウォン・カーウァイ)   
出演:トニー・レオン,フェイ・ウォン,ブリジット・リン,金城武,チャウ・カーリン      

はやりのウォン・カーウァイ物である。スタイリッシュな作品でデート映画である。デート映画と言っても馬鹿にしている訳ではないが、男同士で観る映画の種類ではない。単純に言えば「恋愛もの」であるが、ハイレベルな作品でタランティーノが全米プロデュースを買ってでるだけの事は確かにある。      

2部構成になっており、それぞれの語が交わる事はなく独立している。ファーストフードショップが物語りの中心にあり、登場人物が右往左往する珍しくもないストーリーなのだが、この監督だだものではない。      

まず、映画の中に流れる時間の感覚が実に見事である。手持ちカメラによる軌跡を描く影像、シツコイ位のジャンプカット、スローモーション。それぞれが繊細につなぎ合わされていて独特の時間を演出している。下手にこの手の演出をやるとバラバラで手に負えないこまぎれビデオクリップになってしまう。ワンカット、ワンシーンは大した物でないが、トータルで観ると実に心地よいバランスである。      

次に音楽。音楽と言うよりこの映画の場合は雑音。周りの雑音が憎いくらいに良い。飛び交う多国言語、ラジオ、雨、喧騒。いかにも香港らしい。この雑音が独特の時間の上に存在しており、香港の猥雑な空気感が伝わってくる。      

実は、前半の犯罪者と警官の物語は、この映画自体の入れ子式になっており大半は犯罪者側、警官側の平行した語り口で語られ一瞬だけ交錯する。前半の物語と後半の物語とが一瞬交錯するのと同じで、映し出される時間の他方でもいくつもの時間が流れている事が感じられる。      

また、出演者側ではファーストフードショップ店員役のフェイ・ウォンがすばらしく、映画に内面的な躍動感を与えることにも成功している。彼女が演じた等身大の若い(今風の)女性像に共感できる女性も多いのではないだろうか。      

余談ではあるが、邦題の「恋する惑星」もよくできたタイトルであるが、「夢みる惑星」の方がしっくりくるような気がした。        
        

shima-s@fka.att.ne.jp
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