file No.04
ショーシャンクの空に 1997.9.26 原作、脚本:スティーブン・キング 監督、脚色:フランク・ダラボン 撮影:ロジャー・ディーキンズ 出演:ティム・ロビンス,モーガン・フリーマン,ボブ・ガントン,ウィリアム・サドラー 痛快な映画である。無実の罪で投獄された男の20年間の物語であるが、圧し掛かってくるような悲壮感がない。 まず、物語のアイデアが素晴らしい。また、随所に張られた伏線も見事であり、二時間数十分の長編ながら観る者を飽きさせない。 タイトルバックで一気に投獄されるまでを描き切り、残された時間のほとんどが獄中の話である。 そこで展開されるのは「獄中もの」の定番である「看守による暴力」「ホモセクシャル」「所長の横暴」「老服役者」等で見慣れた感があるが、モーガン・フリーマンの独白により語られていくこの映画は他の作品と一線を画す視点で描かれている。 ティム・ロビンス演じる主人公と始めて会話した後に語られる「彼は散歩でもしているかのように見えた」の独白に象徴されるような全く場違いな人間を、突然獄中にほうり込んだらどうなるか。
ティム・ロビンスの押さえた見事な演技もさることながら、主人公の描写が実に注意深く演出されており脚本の素晴らしさも光る。 入所当夜におきるエピソードで、主人公の姿を見せずに「だだの坊ちゃん」ではないことが表現されるくだりは特筆に値する。そして、主人公の毅然とした態度や物の考えかたが周りに影響し始めるさまは観ていて心地いい。 看守達への税金対策相談や図書館設立までのエピソード等はキングならではのアイデアであり、主人公を実に魅力的なものにしている。 刑務所の屋上でビールを飲むシーンや囚人達が所内に響きわたる音楽に聞き惚れるシーンなどは、何故かノスタルジアさえ感じてしまう。撮影も美しい。 主人公の綿密な作戦にも気づかず、ただただ見入ってしまうのはやはり「脚本の見事さ」につきるのではないだろうか。そして、ラストの痛快さにニヤリとさせられる作品であった。
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