file No62
CURE
1998.10.17
監督・脚本:黒沢清
出演:役所広司,うじきつよし,中川安奈,萩原聖人

久々に邦画です。かなり評判が良いので見るに気なってしまいました。監督は黒沢清。主演は「うなぎ」の役所広司です。

物語のあらすじは,こうだ。喉元を×の字に斬り裂かれる殺人事件が多発し始める。犯人は共通してごく普通の平凡な人間。自覚はあるのだが,動機はこれと言って無い。なぜ,理由もなく同じ手口で・・。そして,犯行に及んでしまった犯人達の周辺には”記憶障害の男”の影が・・。なんて,ことらしい。

確かに面白い。邦画にしては(生意気な言い方)うまい。そして,恐い。感情を殺した人物描写。省略によるストーリー展開。緊張感のある引き気味の長廻し。役所広司の鬼気迫る演技,うじきつよしの押さえた演技も見事ではある。

しかし,何か引っ掛かる。理屈っぽいんだな。

何か”頭のよさそうな奴が,頭の中でこね回した”ような理屈っぽさ。中途半端に分かりやすいのだ。催眠術を使った殺人教唆ってのは,良いとしても,その暗示のかけ方がイマイチなんだな。

水の使い方はウマイがライターはチョットね。”記憶障害の男”の素性がばれるのも,もうひと捻りしてもらいたい。遺留品から割り出したのだろうが,素性の説明がされすぎ。犯人の部屋の様子は在り来たりで,最近で言えば「セブン」の犯人と同じ。分かりやすい。分かりやすすぎである。私だったら,犯人の部屋はこうする。場所はそこで良いとしても,部屋の中には何も置かない。あるのは,TVとビデオデッキ。そして,なぞのビデオテープ1本。なんて具合。

「セブン」の場合は部屋が見つかる前に,それなりの暗示があったり,FBIの影がちらつくあたりで,なんとなく予想はできる。それが,分かってしまうこと自体は問題ではない。なぜなら,こちら側が予想する以上の犯人像や犯行が,ラストまで観るものに不安感や不快感を与えるだけのインパクトを持ち得たから。

しかし「CURE」にはそれが弱い。犯人像が特定されてからは尻すぼみなのだ。提示される負のイメージも,想像を超えて神経を逆なでするレベルではない。(洗濯機の音。波の音。鈍器で殴られる音。転落して地面に叩き付けられる音。など,不快な音の数々は効果的で◎。)それならば,犯人像を”良く分からない”状態にしておいた方が,不安は残る。そして,不快感を残したまま射殺される。

もっと,難解で混乱してても良いのではないかな。
 

shima-s@fka.att.ne.jp


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