file No.14
柔らかい殻
1997.10.31  
監督、脚本:フィリップ・リドリー  
出演:Viggo Mortensen,Lindsay Duncan,Jeremy Cooper

残酷で奇妙な作品である。誰でもが思い当たるような少年期の話が淡々と展開していく。少年の残酷さや危うさが、コントラストの強い農村風景をバックに現実と幻想との境無く強烈でかつ執拗に描き出される。 

オープニングからショッキングである。捕まえてきたカエルに空気を吹き込み風船状にして路上に放置する少年達。そこに通りがかっる黒装束の女。パチンコで狙いを定める少年。あわれな姿のカエルを覗き込む女の鼻先でカエルが勢いよく破裂する。真っ赤な血しぶきを上げ破裂する。カエルの血を顔中に浴びる黒装束の女。悲鳴をあげる女をよそに笑いながら走り去る少年達。神経を逆なでするような描写である。 

この作品は主人公の少年の目を通して見える世界観が描きだされており、その中で登場する大人達は全て病んでいる。 

勝ち気でヒステリーの母親、気弱で同性愛者の父親、水爆実験に参加し衰弱していく兄、亡き夫に異常に執着する女、執拗で専制的な保安官。彼らは非常に誇張され捻じ曲げられて少年の目に映っている。しかし、少年にはこの世界が全てなのだ。 

やがて、あまりにも病んだ大人達の行動を現実のものとは認識できず、気づかぬ内に空想の世界を利用することで理解しようとし始める。また、唯一の「現実」である友達と一緒に、確かめるようにいたずらを繰り返す。 

もはや、父親が爆死しても衝撃は走らず夜空を焦がし炎上する光景を、ただ美しいと感じるようになる。確かにそれは美しく、少年の笑顔も一番輝いている。残酷で悲しいシーンである。その後、友達の死や「現実」に近い存在であった兄の思いもよらぬ姿をみて、現実である「自分」の世界に「神」を作りあげてしまう。 

その「神」は誕生したのは、破裂したカエルの腹からであり、ガソリンで満たされ爆発した父親の腹や、強引に水を飲まされ肥大化した自分の腹からからでもある。「柔らかい殻」から誕生したのだ。しかし、またその「神」でさえも腐敗しているのである。 

ラスト、少年の術中にはまり殺害された女に泣きすがる兄の姿に、「現実」の崩壊を見た少年は不毛の大地を駆け巡る。号泣しながら両手を天に掲げ「神」に哀願する。そして、日は沈む。 

終始、死のイメージがだけが付きまとった重苦しい作品であった。 
       

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