file No16
バートン・フィンク
1997.11.6
監督、脚本 :ジョエル・コーエン 
製作、脚本 :イーサン・コーエン 
出演 :ジョン.タトゥーロ,ジョン.グッドマン,マイケル.ラーナー                   

悪夢である。日常の中に潜んでいる「狂気」や「奇妙な一瞬」が悪夢の世界を作り上げている。ある人間の「日常」中に非日常的な事象が侵入したために起こる悪夢の話である。   

庶民の「日常」に接していた脚本家が認められ、彼にとって「非日常的」なハリウッドで仕事をすることになる。 
    
悪夢の始まりである。    
初めに彼がたどりつくのがホテルであるが、やはりここも奇妙な「非日常的空間」である。フロントマンがいきなり「床の下」から登場するあたり、普通ではない。長い廊下に並ぶ各部屋の扉。規則的に並ぶ靴。あまりにもパターン化されたシンメトリックな映像。異空間への長いトンネルと見るべきであろう。 
    
部屋に入りやっと自分の「日常的」空間を得たかに思えたが、飛び回る「蚊」に早くも邪魔されることになる。「非日常」へごくゆっくり傾きかける描写が見事である。 
    
仕事の方も「非日常的」である。傲慢な社長。多分、彼が今まで接したこのないであろうタイプの人間である。そして今までに無い「レスリング物」の脚本依頼。困惑するバートン・フィンク。  

ある意味「日常的」な「現実」を生きてきた彼は、ここに来て「非日常的」な「虚構」の世界に身を置ざるを得なくなる。そして、苦悩の中で彼の日常は次第に剥がれ落ち、裏にある「虚構」が露呈していく。ちょうど、部屋の壁紙が剥がれ落ちるように。   

誰でもが発狂したくなるような状況の中、必死に正常を保とうとする彼の姿は悲しくて滑稽である。   

コーエン兄弟の映像センス、テクニックは素晴らしいのだが重苦しさだけが印象にのこり、彼ら独特の「サッパリ感」が感じられない作品であった。   
     

shima-s@fka.att.ne.jp
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