file No.20
フィッシャー・キング
1997.11.29
監督:テリー・ギリアム
出演:ジェフ・ブリッジス,ロビン・ウイリアムス,マーセデス・ルール,アマンダ・プラマー

テリー・ギリアム作品といえば「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」ぐらいしか観たことがなかった。あの薄暗い近未来の描写、独特のディテールよって醸し出されるマブノーマルな雰囲気、それこそがテリー・ギリアムの世界だと思っていた。 

しかし、1991年のこの作品はちょうど「ブラジル」と「12モン・・」の間に製作されたものであるが、あまりにも両作品と違う世界を描いている。 

「12モン・・」は「ブラジル」の延長線上にあり、いわば続編的要素が感じられる薄気味悪い作品であったのに対して、この作品は一転してファンタジーである。監督自ら「デート映画」だと公言しているから間違いない。そのため、あの世界を期待していた私は肩すかしをくらってしまった。 

かといって、おもしろくないわけではない。いいや、おもしろくない訳が無い。さすがである。 

主演のジェフ・ブリッジスを完全に食ったロビン・ウイリアムスの名演。うますぎて少々鼻につくのはご愛敬。女優陣もいい。 

うれっこDJと自分の不用意な発言がもとで妻を射殺された精神分裂症の元大学教授との「償い」と「救済」の話である。 

DJは元大学教授へ「罪の償い」を献身的に行うことで自分自身含めたを「救済」しようとしているし、元大学教授は「聖杯」を手にいれようとすることで自分自身を深い痛みから「救済」しようとしている。彼は現実には存在しない「聖杯」によって現実の世界にぎりぎり止まっている。 

かなしい話である。しかし、暗く重苦しい作品にはなっていない。 

教授が現実の世界に止まっているもうひとつの要因である「あこがれの女性」に寄せる気持ちや、デートをするくだりはとても初々しく軽妙に描かれている。特にデートの道すがら元大学教授が女性に小さな椅子(ゴミくずのシャンパンのフタでできている)をプレゼントするくだり(ちょっとクサイがロビン・ウイリアムスだから許される)や駅のコンコースが大舞踏会になるシーンなどは特に印象にのこる名シーンである。  

もう一つ、DJがエージェントと車の中で一線に復帰する話をしている時にホームレスが近づいてくる。その時エージェントがDJに言う「小銭でもくれてやれ」。そしてDJが言う「それで奴は救われるのか?」 

献身的な「救済」が必要な人間はいるのだ。                    
 

shima-s@fka.att.ne.jp
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