file No61
ニル・バイ・マウス」 1998.10.16 監督・脚本:ゲイリー・オールドマン 製作:リュック・ベッソン,ダグラス・アーバンスキー,ゲイリー・オールドマン 音楽:エリック・クラプトン 出演:レイ・ウィンストン,キャシー・バーク,チャーリー・クリード・マイルズ,ライラ・モース ゲイリー・オールドマンだそうです。「レオン」以来すっかりメジャーになってしまいましたが,今度は監督です。良い役者なんですが,監督としてはどうでしょうか?今回は脚本も書いています。期待は高まります。 で,どうだ。結果から言うと「疲れる」映画でした。決して退屈だった訳ではありません。決して傑作だともいえない。なにもないようで,何かが残るような感じ。何か疲れました。 ちょっと,画面構成が変です。最初のうちは非常に気になります。中途半端なのです。それに振らつきます。アップを多様します。画面を見てるだけで,気分が悪くなり「疲れ」ます。
ドラッグに溺れ,母親に金をせびる息子。ドラッグや酒のために,妊娠中の女房を殴り付ける亭主。酒,タバコに逃避する女達。
観ていくうちに,非映画的画面構成の,ねらいと言うか伝わってくるものが分かって来ます。これは第三者的な位置からの目ではなく,明らかに当事者の視線で撮られているのです。見事です。 錯乱した亭主の暴力で女房が失神するシーンは強烈です。リアルすぎます。これもカメラが見事なんです。 ゲイリー・オールドマンの実体験を基に作られているのは,もはや明白です。 この話の男達も家族も,そしてオールドマン自身も,ろくでもない”おやじ”のために,背負い込んだ影が色濃くあらわになっていきます。 だた,平々凡々と暮らしてきた私自身から観ると,この家族と言うか取り巻く環境(?)もかなり荒涼としています。ぞっとします。 息子が暴力亭主の家で盗みを働いて,逃げ回って自宅に戻ってくると,母親や姉貴が笑っている。殺されるかもしれないのに。 息子が実刑を受け,入れられた刑務所内で刺されて,異常犯罪者達の巣くつで「オカマ」を掘られそうになっているのに,笑っている。死んでいたかもしれないのに。 みんな,何かにヤラれているようで,恐い。
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